CVSup の紹介
CVSup は, リモートのサーバホストにあるマスタ CVS リポジトリから
ソースツリーを配布し更新するためのソフトウェアパッケージです. FreeBSD
のソースは, カリフォルニアにある中心的な開発マシンの CVS リポジトリの
中でメンテナンスしています. CVSup を使用することで, FreeBSD ユーザは
簡単に自分のソースツリーを最新の状態にしておくことができます.
CVSup は "pull" モデルとよばれる更新のモデルを採用しています.
pull モデルでは, 各クライアントが更新したい場合に更新したい時点で,
サーバに更新の問い合わせをおこないます. サーバはクライアントからの
更新の要求を受け身の状態で待ちます. したがって, すべての更新は
クライアント主導でおこなわれます. サーバは頼まれもしない更新情報を
送るようなことはしません. ユーザは CVSup クライアントを手動で実行して
更新をおこなうか, cron ジョブを設定して定期的に自動実行する必要があります.
用語 "CVSup" のように大文字で表記しているものは, ソフトウェアパッケージ
全体を指します. 主な構成物は, 各ユーザマシンで実行するクライアントである
"cvsup", FreeBSD の各ミラーサイトで実行するサーバ "cvsupd" です.
FreeBSD の文書やメーリングリストを読んだ際に, sup についての言及を
見かけたかもしれません. sup は CVSup の前に存在していたもので, 同様の
目的で使われていました. CVSup は sup と同じように使用されており, 実際,
sup と互換性のあるコンフィグレーションファイルを使用します. しかし,
CVSup の方がより高速で柔軟性もあるので, もはや sup は FreeBSD
プロジェクトでは使用されていません.
CVSup のインストール
FreeBSD 2.2 以降を使用している場合, CVSup をインストールするもっとも
簡単な方法は, FreeBSD [ の
または対応する を使うことです. どちらを使うかは,
CVSupを自分で作りたいかどうかによります.
]FreeBSD-2.1.6 を使用している場合は, 残念ながら FreeBSD-2.1.6 には
存在しないバージョンの C ライブラリが必要となるため バイナリ package
は使用できません. しかし, は FreeBSD 2.2 とまったく同じように簡単に使うことができます.
単に tar ファイルを展開し, cvsup ディレクトリへ cd して "make install"
とタイプするだけです.
CVSup は で書かれているため, package と port 両方とも Modula-3
ランタイムライブラリがインストールされていることが必要です. これらは
port の および package の にあります. これらのライブラリの port
や package に対して cvsup と同じ管理方法を取っていれば, CVSup の
port や package をインストールする際に, これらのライブラリも自動的に
コンパイルそして/またはインストールされます.
Modula-3 ライブラリはかなり大きく, これらの転送やコンパイルはすぐに
終わるものではありません. この理由から, 三つめの選択肢が提供されています.
以下のアメリカ合衆国にある配布サイトのどちらからでも, FreeBSD 用の
スタティックリンクされた CVSup 実行形式が入手可能です:
-
(クライアント).
-
(サーバ).
また, ドイツのミラーサイトは以下の通りです:
-
(クライアント).
-
(サーバ).
訳注: 日本国内のミラーサイトは以下の通りです:
-
(クライアント).
-
(サーバ).
ほとんどのユーザはクライアントのみが必要になるでしょう. これらの
実行形式は完全に自己完結しており, FreeBSD-2.1.0 から FreeBSD-current
までの, どのバージョンでも動作します.
まとめると, CVSup をインストールするための選択肢は以下の通りです:
- FreeBSD-2.2以降: スタティックバイナリ, port, package
- FreeBSD-2.1.6: スタティックバイナリ, port
- FreeBSD-2.1.5 以前: スタティックバイナリ
CVSup のコンフィグレーション
CVSup の動作は, "supfile" と呼ばれるコンフィグレーションファイルで
制御します. FreeBSD-2.2 からは, supfile のサンプルがディレクトリ
の下にあります. 2.2 以前のシステムを使用している場合は, これらの
サンプルを
から入手することができます.
supfile には以下の cvsup に関する質問への答えを記述します:
[
][
][
][
][
]
次のセクションで, これらの質問に順番に答えながら典型的な supfile
を組み立てていきます. 最初に supfile の全体構造を説明します.
supfile はテキストファイルです. コメントは "#" から行末までです.
空行とコメントだけの行は無視します.
残りの各行には, ユーザが受け取りたいファイル群について記述します.
行の始めは, サーバ側で定義した論理的なファイルのグループである
「コレクション」の名称です. コレクションの名称を指定して, 欲しいファイル群を
サーバに伝えます. コレクション名の後には, ホワイトスペースで区切られた
0個以上のフィールドが続きます. これらのフィールドが上記の質問に対する
答えになります. フィールドには 2種類あります: flag フィールドと value
フィールドです. flag フィールドは "delete" や "compress" のような
単独のキーワードから成ります. また, value フィールドもキーワードで
始まりますが, キーワードの後にはホワイトスペースは入らず, "=" と
二つめの単語が続きます. 例えば, "release=cvs" は value フィールドです.
通常, supfile には受け取りたいコレクションを一つ以上指定します.
supfile を組み立てる一つの方法として, コレクション毎にすべての関係の
あるフィールドを明示的に指定する方法があります. しかし, これでは supfile
のすべてのコレクションに対してほとんどのフィールドが同じになるため,
行が非常に長くなってしまい不便になります. これらの問題を避けるため,
CVSup ではデフォルトを指定することのできるメカニズムが提供されています.
特殊な擬似コレクション名 "*default" で始まる行は, supfile 中の後続の
コレクションに対して使用する flag フィールドと value フィールドの
デフォルトを設定するために利用できます. 個々のコレクションで固有の値を
指定すると, デフォルト値を無効にできます. また "*default" 行を追加すると,
supfile の途中からデフォルト値の変更や追加が可能になります.
これまでの予備知識を基に, [
のメインのソースツリーを受け取って更新するための supfile を
組み立ててみましょう.
]- どのファイルを受け取りたいのか?
CVSup の実行
さて, 更新の準備ができました. これを実行するコマンドラインは
実に簡単です:
cvsup supfile
もちろん, ここでの "supfile" は作成したばかりの supfile
のファイル名です. X11 環境で実行するものと仮定して, cvsup は
通常の操作に必要なボタンを持つ GUI ウィンドウを表示します.
"go" ボタンを押して, 実行を監視してください.
この例では実際の "/usr/src" ツリーを更新しているので, cvsup
にファイルを更新するのに必要なパーミッションを与えるために, ユーザ root
で実行する必要があります. コンフィグレーションファイルを作ったばかりで,
しかも以前にこのプログラムを実行したことがないので, 神経質になるのは
無理もない話だと思います. 大切なファイルに触らずに試しに実行する簡単な
方法があります. どこか適当な場所に空のディレクトリを作成して,
コマンドラインの引数で指定するだけです:
mkdir /var/tmp/dest
cvsup supfile /var/tmp/dest
指定したディレクトリは, すべての更新されるファイルの
更新先ディレクトリとして使用します. CVSup は "/usr/src" の下の
ファイルを検査しますが, 変更や削除はまったくおこないません.
かわりに "/var/tmp/dest/usr/src" に更新されたすべてのファイルが
置かれるようになります. この方法で実行した場合は, CVSup は base
ディレクトリの status ファイルを更新せずにそのままにします.
これらのファイルの新しいバージョンは指定されたディレクトリ
に書き込まれます. "/usr/src" の読み取り許可がある限り, このような
試し実行のためにユーザ root になる必要はありません.
X11 を利用していないとか単に GUI が気に入らない場合は, cvsup
起動時にコマンドラインに二つほどオプションを追加する必要があります:
cvsup -g -L 2 supfile
"-g" オプションは cvsup に GUI を使用しないように伝えます. X11
を利用していない場合には自動的に指定されますが, そうでない場合は
明示的に指定します.
"-L 2" オプションは cvsup にファイル更新中の詳細情報をプリントアウト
するように伝えます. 冗長性には "-L 0" から "-L 2" までの三つのレベル
があります. デフォルトは 0 であり, エラーメッセージ以外はまったく出力
しません.
たくさんの他のオプション変数があります. それらの簡単な一覧は
"cvsup -H" で表示されます. より詳しい説明はマニュアルページをご覧ください.
動作している更新の方法に満足したら, cron(8) を使って cvsup を定期的に
実行させる準備をすることができます. cron から起動する際には, 明示的に
cvsup が GUI を使わないようにする必要があります.
CVSup ファイルコレクション
CVSup 経由で入手できるファイルコレクションは階層的に組織化されています.
いくつか大きなコレクションがあり, それらは小さなサブコレクションに
分割されています. 大きなコレクションは, そのサブコレクション毎に
受信することと同じことになります. 下の一覧ではコレクション間の階層関係を
字下げして表現します.
最も一般的に使用するコレクションは
cvs-all release=cvs
メインの FreeBSD CVS リポジトリであり, 輸出規制された暗号化コードは含まれていません.
distrib release=cvs
FreeBSD の配布とミラーに関連するファイルです.
ports-all release=cvs
FreeBSD の ports コレクションです.
ports-archivers release=cvs
アーカイビングのツール.
ports-astro release=cvs
天文学関連の ports.
ports-audio release=cvs
サウンドサポート.
ports-base release=cvs
/usr/ports のトップにあるその他のファイル.
ports-benchmarks release=cvs
ベンチマークプログラム.
ports-cad release=cvs
CAD ツール.
ports-chinese release=cvs
中国語サポート.
ports-comms release=cvs
通信ソフトウェア.
ports-databases release=cvs
データベース.
ports-devel release=cvs
開発ユーティリティ.
ports-editors release=cvs
エディタ.
ports-emulators release=cvs
他の OS のエミュレータ.
ports-games release=cvs
ゲーム.
ports-graphics release=cvs
グラフィックユーティリティ.
ports-japanese release=cvs
日本語サポート.
ports-korean release=cvs
韓国語サポート.
ports-lang release=cvs
プログラミング言語.
ports-mail release=cvs
メールソフトウェア.
ports-math release=cvs
数値計算ソフトウェア.
ports-mbone release=cvs
MBone アプリケーション.
ports-misc release=cvs
色々なユーティリティ.
ports-net release=cvs
ネットワーキングソフトウェア.
ports-news release=cvs
USENET ニュースのソフトウェア.
ports-plan9 release=cvs
Plan9 からの色々なプログラム.
ports-print release=cvs
印刷ソフトウェア.
ports-russian release=cvs
ロシア語サポート.
ports-security release=cvs
セキュリティユーティリティ.
ports-shells release=cvs
コマンドラインシェル.
ports-sysutils release=cvs
システムユーティリティ.
ports-vietnamese release=cvs
ベトナム語サポート.
ports-www release=cvs
World Wide Web 関連のソフトウェア.
ports-x11 release=cvs
X11 のソフトウェア.
src-all release=cvs
メインの FreeBSD ソース群であり, 輸出規制された暗号化コードは含まれていません.
src-base release=cvs
/usr/src のトップにあるその他のファイル.
src-bin release=cvs
シングルユーザモードで必要なユーザユーティリティ
(/usr/src/bin).
src-contrib release=cvs
FreeBSD プロジェクト外部からのユーティリティおよびライブラリ,
比較的無修正 (/usr/src/contrib).
src-etc release=cvs
システムコンフィグレーションファイル (/usr/src/etc).
src-games release=cvs
ゲーム(/usr/src/games).
src-gnu release=cvs
GNU Public License 下にあるユーティリティ (/usr/src/gnu).
src-include release=cvs
ヘッダファイル (/usr/src/include).
src-lib release=cvs
ライブラリ (/usr/src/lib).
src-libexec release=cvs
システムプログラムであり, 通常は他のプログラムから実行される
(/usr/src/libexec).
src-release release=cvs
FreeBSD の release を構築するために必要なファイル (/usr/src/release).
src-sbin release=cvs
シングルユーザモード用のシステムユーティリティ(/usr/src/sbin).
src-share release=cvs
多様なシステム間で共有可能なファイル (/usr/src/share).
src-sys release=cvs
カーネル (/usr/src/sys).
src-tools release=cvs
FreeBSD の保守用の色々なツール (/usr/src/tools).
src-usrbin release=cvs
ユーザユーティリティ (/usr/src/usr.bin).
src-usrsbin release=cvs
システムユーティリティ (/usr/src/usr.sbin).
www release=cvs
World Wide Web のデータ用のソースです.
cvs-crypto release=cvs
輸出規制された暗号化コードです.
src-eBones release=cvs
Kerberos および DES (/usr/src/eBones).
src-secure release=cvs
DES (/usr/src/secure).
distrib release=self
CVSup サーバ自身のコンフィグレーションファイルです. CVSup ミラーサイトが使用します.
gnats release=current
GNATS バグトラッキングデータベースです.
src-sys release=lite2
lite2 kernel のマージ用の CVS リポジトリです.
src-sys release=smp
SMP プロジェクト用の CVS リポジトリです.
www release=current
インストールされた World Wide Web のデータです. WWW ミラーサイトが使用します.
CVSup のアナウンス, 質問およびバグ報告
CVSup のほとんどの FreeBSD 関連の議論は &a.hackers; で
おこなわれています. ソフトウェアの新しいバージョンは &a.announce; で
アナウンスされます.
質問とバグ報告はプログラムの作者, へ
送ってください.